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本当に大切なものとは?~ユナイテッドピープル映画祭~

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7月5~7日に福岡市で開かれた、「ユナイテッドピープル映画祭」に行ってきました。
ユナイテッドピープルとは、主催の映画の配給会社で、貧困や平和、環境といった社会問題をテーマとした映画を取り扱うほか、募金サイトの運営などをされています。
震災以降、会社ごと福岡に移り、社員も福岡で暮らしているというユニークな会社で、当ブログで過去に紹介した「狩猟女子」、千春ちゃんもそのひとり。(http://ptart.exblog.jp/20221164)

映画祭は、単に映画だけを上映するのではなく、映画の上映のあとにテーマに関連のあるゲストを招き、トークをしたり、来場者同士で感想を話し合う時間が設けられたり、市民団体やNPOなどがブースを出し、活動を紹介したりと「人と人をつないで世界の課題を解決する」という同社の理念を体現したイベントとなっていました。

3日間で映画上映9本トークゲスト8人というマラソン企画で、私も全部参加したわけではないのですが、とても考えさせられるものでした。

ホリエモンこと堀江貴文さんとユナイテッドピープル社長の関根健次さんのトークでは、平和問題の解決を最課題に掲げている関根さんに対し、環境なり平和なり、将来のことを心配するのは心配のし過ぎではないか?と応える自称「楽観主義者」の堀江さんとのすれ違う議論が、お互いの立脚点の違いを浮き彫りにしていてとても示唆的でした。
堀江さんも収監の経験から再犯者を防ぐための社会活動を支援するなどされているそうですが、私は社会で起こっている問題についてそこまで楽観的にはなれないなあというのが正直な感想で、そうではない多数の人たちと、どう議論したり協働したり(あるいはしないとか)するべきかというのを考えなければいけないと感じました。

最終日には、元NHKのアナウンサーでフリージャーナリストの堀潤さんの映画「変身 Metamorphosis」世界初公開がありました。
堀さんがアメリカのUCLAへ留学中に制作されたものですが、NHKに上映中止を求められたといういわば”問題作”。なんと前日の朝まで編集をし続けていたそうです。
原発問題をテーマに、福島やスリーマイル、アメリカの野外実験場でのメルトダウンのドキュメンタリーと、堀さんが立ち上げたメディア「8bit News」に市民が投稿した動画などをつないで編集されたものでした。その後トークにも登壇された堀さんいわく、タイトルの「変身」はカフカの著作で、理不尽にも虫になってしまった主人公を最初は心配する家族や周りの人も、次第に邪魔者扱いするようになる・・・原発被害者を取材する過程でその構造が重なって見えたそうです。
SNSの発達などで、メディアはこれまでのように確かな完成品を一方的に視聴者に提供するのではなく、まだ価値判断が確定していないようなこともスピード感を持って伝え、視聴者と双方向的に議論するべきだと語る堀さん。その考えを貫き、NHKを退社され、自ら個人で発信するほか、プロの技術で一般の人(非メディア人という言葉を使われていました)が自ら情報発信する支援もされています。
メディア不信が叫ばれて久しいですが、堀さんのように受ける人の立場に立って、また伝えたいという強い思いを持つ人もいるんだと知り、とてもうれしく、その勇気や行動力に感服しました。

こう社会問題とか貧困、平和だとかいうと、胡散臭いイメージを持つ方もいるかもしれませんが、現に児童労働や環境破壊、搾取や貧しさで困っている人がいるということ、それを救うべきというのはおそらく誰しも共有できる価値観のはずで、ただ違うのは私たちの日常生活の中で、どこまで当事者意識をもって考えられるかということだと思います。
ゲストのひとり、白木夏子さんは、20代のときにインドの最貧困層が働くジュエリーの採掘現場の過酷な状況を見て、その経験から搾取のないジュエリーブランドを経営することを決意したそうです。
日本の豊かな生活の中で、安い商品の向こう側の生産者をイメージできるか?それは貧困だけではなく、福島の原発問題もなんでも同じです。被害者の生活のことを考えられるか?社会問題を知識として知っていても、実際に自分がどんな行動をとれるか、解決のために何をするべきかを問い、行動している人は僅かです。
もちろん常に意識することは難しいでしょう。人は現状に慣れて、忘れていくのが当たり前だからです。だからそのために、意識的にこういった映画を見たり、ニュースやNPOなどの活動の情報を得たりすることで、想像できるように努めるべきだと感じました。

不況により経済成長神話が崩壊、さらに震災、原発事故以降、社会は混迷を極め、多くの人たちがこれまでの価値観の転換を迫られています。
日本は人口減少していく中、今だ社会が描くのは「成長戦略」、右肩上がりの世界です。
でも、若者を中心に消費離れが進み、これまで物を持つことが力の証だったのが、シェアで効率や人とのつながりを求めるなど、変化を見せています。モノを生産、販売するのではない、社会起業といった新しい形のビジネスも生まれています。
社会システムが用意したレールがあり、わき目も振らず働けば安心という時代ではないことを、私たちはもう知ってしまっているけど、それはこれまで常識として問われなかった「お金って本当に大事なのかな?」「本当に必要なものは何か?」「なんのために生きるのか」といったことを考える大きなチャンスです。実際に、震災後は以前より格段に社会の動きと生活が密接だということに多くの人が気付き、考えたり話し合ったり、実践したりするようになったと感じます。
後の時代になればなるほど、社会問題は山積していって複雑になり、解決も難しくなるかもしれませんが、指針のないこういうときこそ、将来的、長期的な視点や哲学をもって、社会をデザインしていかなければ。
それは大変な作業であるのと同時に、とてもクリエイティブであり、希望のあることだと信じています。
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by parttimeart | 2013-07-10 14:55 | レポート

アート専門家ではないふつうの人(会社員、福岡在住)が愛と情熱だけでアート、カルチャー情報を発信するメディアです。facebookではブログにはない情報をリアルタイムで更新中☆http://www.facebook.com/parttimrart
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