P.T.A―Part Time Art ふつうの人が発信するアートカルチャーマガジン―

あなたもすべては「きっと、うまくいく」!!

3人組というのはなんでこんなにバランスが良いのでしょうか。
ズッコケ三人組、すてきな三にんぐみ、perfume(←偏った例示)!
古今東西、夏の大三角形の星々のように多くのトリオが輝きを放ってきました。
1人ではさみしい、2人では密すぎる、そこで3人になると一気に関係性に多様さが増し、ミニマムであり強靭な安定感を持つ黄金比を発揮するのです。

インド映画「きっと、うまくいく」の邦題は「3 idiots」。まさにどストレートに「3バカトリオ」というわけです。

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IT先進国として発展するインド随一の工業大学を舞台に、同窓生3バカ男子が、熾烈な学歴競争社会の常識に立ち向かい、繰り広げるドタバタ劇と、その10年後、卒業以来姿をくらましてしまったそのうちの1人を追うロードムービー的なストーリーが交互に展開されます。

映画に登場するおバカたちは、バカといいつつも超エリートで、それぞれ「将来はエンジニアに」という家族の過大な期待や家庭の事情を背負って入学してきます。学校は恐ろしい学長がナンバーワンを目指して日々学生に鞭を打つような大変厳しい環境。そこに本人のやりたいことや勉強の本来の楽しさというのは完全に置き去りにされています。
そこにそんな「常識」をものともしないランチョーが彗星のごとく現れます。
「半沢直樹」よろしく、ランチョーは権威や常識など気にせず、疑問に思うことはみんなが恐れる学長にも堂々と物申しますが、情に厚く親友や周りの人々に常に誠意をもって接し、どんな困難に対しても前向きに立ち向かっていきます。このキャラクターがあまりにもまっすぐで、ユーモアにあふれているので、ストーリーが進むうちにスクリーンの前の私たちも含めみんな大好きになってしまうのでしょう(しかもイケメン)。
もちろん2バカも親友たちも、彼に魅了され、自分たちの進むべき道を見つけていきます。

このランチョーの口癖が「ALL IS WELL」(きっとうまくいく)。
劇中刷り込みのように繰り返されます。このキャッチ―なフレーズ化にはある種の必死さのようなものを感じました。

というのも、この映画はおバカの青春劇のように見えますが、実はきわめて深刻な現実を描いています。
過剰な社会のプレッシャーに対する「若者の自殺」の問題です。
劇中でもランチョーが問題提起するのですが、
2012年発表のWHOのデータによると、09年の日本の人口10万人当たりの自殺率は24・4、55-64歳代のグループが最も自殺が多いわけですが、
一方インドでは、10・5人。総人口が多いので日本に比べ自殺率は低くても、相当の方が亡くなっているものと思われます。そして驚くべきは、自殺者の年代別では15-29歳の若者たちが最も多く、4万3920人にも上ります。(この時点で自殺者3万人という日本を数で圧倒しています)
映画で描かれているエリート層の自殺も社会問題化しているそうです。

映画では、まっすぐなやり方で、単位もとれて卒業できたし学長とも和解、就職もでき、好きな人とは結婚できる。
結果的になんでも「うまくいく」わけなのですが、そういう「サクセスストーリー」も見せないと希望が持てないほど現状は深刻とも思えます。

この映画は、このような厳しい社会の現実、解決方法の見えない状況におかれる若者たちへ、エンターテイメントでパッケージングしながら、「きっとうまくいく(だから死なないで)」と訴える真摯なメッセージであると感じました。

これはインドだけでなく、自殺大国の日本でも、また世界のあらゆる自由を失くした社会と人たちに通じる問いかけでもあります。本当の豊かさとは何か。学ぶとは、教育とは何か。生きる力とは何か。本来、もともと豊かな文化を持ち、ほかの国より先に先進国となった日本にこそ、自らの高度経済成長の反省も含めてそれらを率先して他国に伝える役割を果たしたいところなのですが・・・残念ながら希望薄です(個人レベルで頑張りましょう)。

ところで、6日に行われたスタジオジブリの宮崎駿監督の引退会見で「子どもたちに"この世は生きるに値するんだ"ということを伝えるのが、自分たちの仕事の根幹になければならない」という言葉がありました。
映画を見ながらこの言葉を思い出し、「大変なことがあっても、生き抜こう」という、まさにこの映画と通じる精神のように感じて、とても幸せな気持ちに包まれたのでした。

3時間近くのストーリーでも次々に繰り広げられるエピソードに、一瞬たりとも飽きることのない超大作です。
泣いて笑って必ずハッピーになれる作品ですのでぜひ機会があったらご覧ください。
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by parttimeart | 2013-09-07 15:04 | レポート

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