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まもなくヨコトリ!やはり森村さんは面白い。

まもなく始まるヨコハマトリエンナーレに向け、アーティスティックディレクターを務める森村泰昌さんの著書「踏みはずす美術史」(講談社現代新書、1998年)を読了。

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高尚とされる美術の名作を前に、教科書的な常套句やに絡め取られず、独自の問題意識や純粋な疑問、感性に従って徹底的に作品を見つめ、アクロバティックに理解していく。その目線は、鑑賞者として多いに学ばせてもらった。

途中はっとしたのは、自身の展覧会に際した評論家の文章の引用と、その同じ内容を補足的に自身で言い換えた文章が併記されていた部分。趣旨は同じなのに、はるかに森村さんの文章の方がわかりやすく、言葉遣いはやさしいのに決して内容は劣っていなかったこと。
特に美術における評論では、観念的な比喩の多用やまどろこしい表現こそが洗練であると勘違いして、読者を置いてけぼりにしたまま筆者が酔いしれてしまうことはよく見受けられるが(もちろん読み取れない読者の私のレベルの問題というお叱りは受けますが)、本当に目指すべきはちゃんと相手に伝えることなのではないかと自戒した。

森村さんの美術の読み解きは、本人も「空想」というように、時に勝手な思い込みなのかもしれないが、それが不思議と強い説得力を持つのは、同じアーティストとして一人の制作者に寄り添うヒューマニックな姿勢であり、共感するアーティストを勝手に擬似家族に感じてしまうほどの熱烈な愛情があるからなのだと思う。

ついに「モリエンナーレ」から本当(?)の「トリエンナーレ」を率いることになった森村さん。
本書では、第10回シドニービエンナーレを引き合いに出しながら、オリジナリティの競争ではなく、相違点を見出しながら世界をの多様な創作の共生を目指す「地球美術史」の概念を提唱されている。
自身も男女や時代の壁を超えた存在としてパフォーマンスする森村さんは、マッチョな20世紀的価値観でなく、柔らかさや共生、協調といったいわば女性的なオーラもまとっているように感じる。

森村さんは自身初の国際展アーティスティックディレクターへのオファーについて、キュレーション経験の不足などから自ら素質はないと言い切っている。当初は断るつもりでいたそうだが、「知らないからこそできることがある」と、新たなステップとして引き受けることにしたそうだ。

前述のように、美術史や美術業界の常識を「踏みはずす」ことのできる森村さんは、何も知らない無邪気な素人に共通する「素人性」を持ち合わせているように見える。(もちろん、森村さんほどのアーティストが「美術を知らない」というのは謙遜であり、酔拳のような高度な知らないふりの作法だと思うが)
だからこそ、なにか違う風穴を開けてくれるのではないだろうかと期待されているし、そういうニーズが日本の美術界にあるということは「素人」(ここでは作家や美術の仕事ではない、美術業界の外側の者という意味)である私には希望が持てる話だと思う。

そんなトリエンナーレは8月1日に開宴を控える。ますます期待を膨らませてくれる一冊となった。

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by parttimeart | 2014-07-22 00:05 | Book

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