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山下清、美を求めたひとりの作家として

あまりにも有名なため、なんだか知った気になっていた山下清さん。山口県立美術館での展覧会で改めて圧倒的な質、量の作品に触れ、彼の日記や記録を辿ることで、ある意味初めて彼に出会うことができました。
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子供の頃に彼がモデルのドラマなどがあっていたようなおぼろげな記憶があるくらいで、彼をもてはやし「裸の大将」とキャラクターに仕立てた当時のメディアには直接触れていないのですが、本展はそういう世間のイメージによる誤解を解くことが強調されています。

軽度の知的障害があり、施設で暮らしながら子供の頃からちぎり絵の才能を開花させた山下さん。
ペン画などには特に、今で言うアールブリュットの作家特有の常人離れした緻密さや集中力が表れていますが、画家として求められる絵を意識して制作されていたり、ゴッホなど他の画家からも学んでいたり、絵を売る・売れることについても考えていたり、アールブリュットより自覚的な作家性を感じます。
また、生活も放蕩していたわけではなく住み込み先を探してまじめに働くこともあり、一般的なイメージは随分覆されます。

印象派の点描のように、単色の色紙を数ミリ単位でちぎり重ねることでつくる微妙なグラデーション、色紙をこより状にねじって出す独特の立体感、静物画の習作などを通じて徹底して身につけられた確かな構図やデッサン力ーー。そして、なにより思わず身震いさせられたのは、ゴッホに影響されたと思われる、髪の一本一本まで貼り絵で描写された自画像。まっすぐ見据える澄んだ瞳には、作家として、人間として、秘めた強く高貴な信念を宿していました。

彼の作品からあふれる工芸的なほどの技巧や、美しい風景を追い求める美意識や探究心を前に、アールブリュットに属させるかどうかといった問題は意味のないものに思えました。そこにはただひとりの作家と一生をかけた素晴らしい作品があったからです。





by parttimeart | 2014-08-12 20:28 | レポート

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