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福岡市・ホームレス支援の最前線に密着レポート①

2015年のクリスマス。イルミネーションが煌々と輝き、お祭りムードの福岡市の中心・天神地区は人出もピークに達していた。
温暖なイメージのある九州とはいえ気温は9度。分厚いコートを着ていても手はかじかみ、寒さが身にしみる。
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この日、おしゃれをして待ちに繰り出す人々とは違う様相の一行が、街を歩き回っていた。
大きな袋や毛布を手いっぱいに抱えて、ホームレスに話しかける。

彼らは1996年からホームレスを支援する「NPO法人福岡おにぎりの会(※1)」のメンバーだ。

この日彼らが毎週金曜日に行っている巡回に同行した。



午後8時。

集合場所となっている福岡市博多区の美野島司牧センターには、約40人の会員やボランティアが集まっていた。
全国的に越冬支援は行われているが、ここでも通常月1回の炊き出しを冬(12月から)の間は毎週行い、おにぎりや衣服を配るそうだ。

「初めてなんですけど・・・」
と、近くの女性に話しかけると、会のメンバーの方を引き合わせてくれた。

「きょうの活動には参加できますか?」
と尋ねると
「もちろん大丈夫です。私たちは教会に事務所を借りていますけどお寺の方も居ますし、いろんな方が参加されています。誰なのか知らないくらいですから。毎週でなくてもこられるときで大丈夫ですよ」と言われて一安心。
会のパンフレットやチラシをいただいた。

福岡市・ホームレス支援の最前線に密着レポート①_c0309568_00061435.jpeg


最近の巡回では約110人のホームレスと接触しているという。
「年越し派遣村(※2)」以降、路上のホームレスは減ったが、ピークの約7年前は800人程度の野宿者がおり、うち約600人に会っていた(※3)という。
近年、ネットカフェやカプセルホテルで暮らす人など、見えにくいホームレスが増加していることも背景にあるかもしれない。

やがて、全員でミーティングが始まった。
大人数がぎゅうぎゅうとなりながら一室に収まる。
最初に司牧センターの外国人の牧師さんがあいさつを始められた。
「福岡のクリスマスはにぎやかですが、家族と別れ、貧しい生活を余儀なくされているホームレスにとっては一番つらい時かもしれません。ぜひ優しさを分かち合いましょう」

そして福岡各地で11コースの班に分かれ、事前に厨房で作られたおにぎりなどが入った包みを車に積み込み、出発した。
渡すのはおにぎり3個、ゆでたまご、カイロ、おにぎりの会のチラシがセットになったものと、今回は特別に下着のクリスマスプレゼントだ。

私は天神コースに参加することになり、午後9時すぎ、5人ほどのメンバーで街に出た。

歩いていると、閉まっている店の軒先で、何人かの男性たちが立っているのが見えた。
路上で寝ている場所などを訪ねていくのかと思っていたら、待ち合わせのように現れたこの人たちがホームレスらしい。
私は、目を疑った。
中にはまだ年老いておらず、身に着けている服もきれいな人も居た。不思議な気持ちで、包みを渡す。
(こんな人でもホームレスになるのか・・・)と複雑な気持ちだった。
「メリークリスマス。よいお年を」
とホームレスの人にいうのも複雑だが、お辞儀して別れた。

会の一行がいくつかのスポットに立ち寄ると、ホームレスの人たちが待っている。
路上のホームレスとはほぼ顔見知りで、すでに支援を続けているのだという。会は、最近来た人も名前などを把握している。

どこでどのように暮らしているのか、詳しくは分からないが、「ここで寝ている」と大通り沿いの階段の踊り場を指して教えてくれた人も居た。
日雇いの仕事をしているという人も居た。
意外だったのはしっかりしていて、ホームレスだとは分からない人が多いことだった。
会の方に「ぜひホームレスの方に話しかけてね」といわれたのだが、なんだかうまくかける言葉が見つからなかった。

20人ほどに配り終え、約1時間で巡回は終わった。
「ホームレスに見えない人も居てびっくりしました」
とメンバーの方に話すと
「それでも『公園でご飯をあさる』って話していたりしますよ」と言われた。
なんだかたくさん聞きたいことがあってどうしたらいいのか、どうやって解決できるのか話し合いたい気にかられたが、
初日なのでそんなもやもやを課題として、今後もかかわっていきたいと思った。



ホームレス支援に対して「ホームレスは努力が足りない、自己責任だ」、という反論はよくあるが、
やはりそれは間違っていると思う。
不況下、正社員として雇われるのはごく一部に限られ、多くの人は人格を持たない代替可能な労働力の供給者として使われる。
働く特に非正規の雇用はブラック企業も多く、「労基法が・・・」などの正論が通用しない状況である。
しかも、ワーキングプアが増加し、仕事をしていることが生活の保障にならないという現実がある。
その中で、ホームレスになる人はリストラや病気、家庭問題などでつまずき、そこから転落してしまうというケースが多い(※4)そうだ。
日本社会の問題は、雇用が新卒から終身雇用という硬直的なあり方であり、正社員になれなかった人は高齢で再就職もしにくくなり、非正規のまま、いつ切られるか分からない仕事に就くことになる。正社員でも、「名ばかり正社員」も多いし、今はいつ会社が倒産するかも分からず、リストラの危険もあるので紙一重である。
そしてもっとも問題なのは、このような殺伐とした労働市場においていったん落ちこぼれた人たちには再起のチャンスが与えられないということだ。
ホームレスになる要因を本人の自己責任だけに転嫁するには余りある、非人道的な状況があるのである。
今ホームレスをさげすんでいる人々も、いつその側になるか分からないのである。
そして、そういう貧しい人々に手をさしのべない寛容さのない社会は恐ろしいと思う。
たとえば、私たちが飲み会で4000円など簡単に払う分で、いったいどれだけのおにぎりをこの人たちに配ることが出来るだろうかと思う。
毎日だれかがホームレスのだれかにごはんをおごれば、飢えることはないだろう。
お金はあるところにはあって、その偏在が正せればみんなごはんが食べられるだろうに・・・。
しかし資本主義社会成立以降、そんな平等な社会は実現していないのだな・・・などと遥かなことを考えてしまうのだが、こうして身近なところで地道に活動しているボランティアの人々の姿には勇気をもらった。
少しずつなにか行動していきたいと思う。

(※1)福岡おにぎりの会 http://onigirinokai.web.fc2.com/onigiri/top.html
(※2)年越し派遣村 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%B4%E8%B6%8A%E3%81%97%E6%B4%BE%E9%81%A3%E6%9D%91
(※3)この数はおおよそ同会の巡回により接触していたホームレスですが、福岡県の調査ではホームレスはH21のピーク時(H21の1月より減少)福岡市に969人が確認されているそう。ちなみに福岡県では福岡市に9割が集中している。
http://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/life/102982_50647021_misc.pdf#search='%E7%A6%8F%E5%B2%A1+%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%83%AC%E3%82%B9+%E3%83%94%E3%83%BC%E3%82%AF'
(※4)このサイトがわかりやすいです。http://www.homedoor.org/problem
こちらは古いですが学術的な分析
http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2004/07/pdf/049-058.pdf#search='%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8B%E8%A6%81%E5%9B%A0'




by parttimeart | 2016-01-30 00:03 | 社会

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